勉強
放課後の美術室内、受験に向けて猛勉強を始めた美術部員達を尻目に、俺は窓側に座ってボンヤリと窓の外を眺める。
高校に受かる気がない訳でもなんでもなく、何故か落ちないという自信があった。
勿論俺が受験するのは地元の公立高校1本。強力な吸引力を持つ滑り止め専門学校を第2志望に書いていない。
ヒロとタムも公立高校1本狙いらしいのだが、俺とは違って3校ある中で1番レベルの高い所を受験する。
そんな勉強熱心な2人の横で昼寝なんてしていれば当然、
「目障り、帰って」
って事になる。
はいはいと立ち上がって図書室に移動するが、そこでも受験を控えた生徒達によるピリピリとした空気。
仕方なく家に帰るが、居心地の悪い場所である事に変わりない。
「勉強せぇ!」
怒鳴る祖母を避けるように部屋に篭るのだが、部屋の前で延々と続く愚痴を聞かされる。弟は賢いのに、だの、弟を見習えだの。
祖母は頭の良い弟がかなり好きだった。そこで「俺も頑張ろう!」とならずに「じゃあ愚痴ってないで弟を褒めに行け」と思ってしまう闘争心もない俺は、ただ五月蝿いと言う理由からヘッドフォンで音楽を聴く。そしてやるのは勉強ではなく無駄に丁寧な掃除だったりした。




