部長
昼休み、ヨネゾーとA組の教室で弁当を食べた後、2人でD組の教室に向かった。
D組には俺とはあまり親しくはないがヨネゾーとは友達のマッちゃんと呼ばれていた生徒がいて、更にはカズマもいる。
「よー」
D組に入った瞬間マッちゃんに手を振ったヨネゾーは、スススッと俺の横からいなくなり、俺は俺でカズマの所に移動する。
4人で喋った事は数回しかなかったと思う。
ヨネゾーとはD組に行く所までは一緒で、その後は夫々別の友達と会話し、予鈴が鳴ったら声を掛け合って2人でA組に戻った。
そのうち、美術部の部活動に顔を出すようになったマッちゃんは、ヨネゾーがいる時にだけ絵を描くようになり、それならばと入部してもらったのだが、そうなるとタムが来なくなり、ヒロも来なくなり。
こうして時々顧問と2人だけの部活動という事に……そうすると顧問の中で部長が決まるのだ。
いつの間にやら、部長。
そんな訳で、来なくなった部員達に声をかけて部活動に来てもらわなければならなくなった。
「ヨネゾー、今日クラブあるからなー」
「はいはい」
朝、教室で声をかけた後はクラブ掲示板の所に行って、活動内容の所に“有”と書き込み、その後B組へ。
「タム、今日クラブあるから」
「んー」
「ヒロ、今日クラブあるから来てな」
「……」
この頃から、ヒロは無言である事が多くなっていた気がする。返答もなく、頷きもしない。
とは言え、タムが返事をくれたのだから来るだろうと俺は自分の教室に戻り、もう1度ヨネゾーに、
「クラブあるって言うたっけ?」
と、確認する風を装ってクラブがある事を伝えた。
「さっき聞いたで」
うんうんと頷きながらも、分かってはいたさ。
放課後、美術室で絵を描く俺の隣には、誰もいない。




