エプロン
家庭科の授業でパーカーを作った。
ミシンの使い方とか、出来栄えとか結構褒められたので、俺はもしかして家庭科の才能があるんじゃないか?と盛大な勘違いをしてしまい、母の日のプレゼントとして手作りのエプロンを作る事にした。
家にミシンはないので、手縫いの本返し縫いだ。
縫いながら、エプロンを手渡した後の反応などを想像し、喜ばれるものだと思い込んでいたのが駄目だったのだろう。
母の日当日、プレゼントを渡すのだからとサプライズを狙い、無告知で母の家に向かって、込み上げてくる笑みを押さえながらチャイムを押した。
ピーンポーン♪
ガチャリと開いたドアの向こうには、怪訝そうな表情の母が立っていて、
「なにしにきたん」
と、ドアノブを掴んだ姿勢のまま言い、少しも招き入れようとはしてくれない。
無告知は駄目だったか。
仕方ない。
「これ届けに来ただけ」
と、俺は姉と母宛に来ていたダイレクトメールを手渡して、そのまま帰宅した。
その時の手作りエプロンは、しばらくの間自分で使用した。




