やってられない
自転車がパンクして、しばらくの間徒歩移動のみだった時の事。
遊びに行こうと集まった駅前には、マウンテンバイクに跨っているヒロと、後ろに二台の付いた自転車に乗っているヨネゾーと、その少し後ろにタムが立っていた。
そこへ合流すると、
「チャリは?」
と、聞かれた。
「パンクしてるから歩いて来た」
特に誤魔化す必要もないので正直に答えると、ヒロ達は困った風に顔を見合わせてから3駅先にあるボーリング場を知っているか?と聞いてきた。
そのボーリング場の隣はゲームセンターになっていて、そこになら1度だけ行った事があるから、知っていると、また素直に答えた。
「良かった。今日はそこでボーリングするから」
と、タムがヨネゾーの自転車の後ろに座る。
「一緒に出発してどーすんねん。木場っち歩きなんやから先に行っといて。俺ら何か食ってから出るわ」
3人は自転車を止めると、近くにあるファストフード店の中へ。
ボーリングに行くと事前に教えてくれていたら、来なかったのになぁ。
とかなんとか思いつつ、3駅先まで電車移動。しかし目的のボーリング場は駅からが遠く、20分は歩かなければならない。
それでも足早に目的地に向かい、やっと辿り着いた。
ボーリング場の前には誰もいないので、俺が先に着いたのだと思いその場で3人の到着を待ってみた。
しかし、来ない。
携帯もないから連絡も取れないし、3人の携帯番号を覚えていないのでこちらからかける事も出来ない。
1時間が経った頃、俺はようやくボーリング場の駐輪場を見て回ってみた。すると、そこには見た事のある自転車が2台。
ヒロ達は先に到着していたのだ。それなのに、外で1時間潰してしまった。
それだけの時間が経っていればゲームも終わっているかも知れない。そろそろ帰ろうかって話になっているかも知れない。なら、中に入るよりも外で待っていよう。
と、入り口横の自動販売機前に戻ってきた所で再び考えた。
外で待っているというのも恥ずかしくないか?
いや、ここは怒って良い場面じゃないか?
そもそも、断らずにここまで本当に歩いて来た自分は馬鹿なんじゃないか?
よし、ここは来なかった事にしよう。
3人がファストフード店に入って行った後、やっとれるか!と家に帰った。という事にしよう。
こうして俺は徒歩で帰路についたのだった。




