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好きな匂い
好きな匂いがある。その匂いが好きだと気が付いたのは親父がタバコを吸っていた時だった。
当時はライターでもマッチでもなくジッポを使っていた親父は、タバコに火を付けるとジッポをテーブルの上に置いた。
初めからそう言う気持ちで手にした訳ではないが、カチャっと開け、中にある芯の臭いを嗅いでみた。
なんと言う油の臭い。とてもじゃないが良い臭いとは言えなかったのだが、吸った分の息を吐ききってからの1回目の呼吸の時、今まで感じた事もない感覚に襲われた。
普通の空気が、物凄く良い匂いに感じたのだ。
しかし、2回目の呼吸からは何も感じない。
そうか、ジッポの臭いを嗅いでからじゃないと駄目なのか!
こうして俺はジッポの臭いを含めて好きになり、ある日の登園時に出会ったのだ。あの魅惑の香りを放つ物体に!
その名も、大型トラック。
大型トラックの排気ガスは、何故あんなにも良い匂いがするのだろう?しかし悲しい事にコレを言って賛同して貰えた事は、1度もない。




