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SHORTで、俺。  作者: SIN
中学校 3年

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309/485

常連?

 喫茶店の雰囲気が好きだ。

 カフェではなく、喫茶店。

 お気に入りの店を探す為、あちこちの喫茶店に行ってはアイスティーを飲み比べ、そしてやっと見付けた店。

 週に3日はそこへ行き、アイスティーを飲んでいた。

 窓側の、1番奥の席に座り、外を眺めながらノンビリと時間を過ごす……。

 しょっちゅう行っていたその喫茶店は家と駅の丁度中間あたりにあったので、通いやすい場所でもあった。

 そんなある日の事、あまりにもお気に入りの店だったので、

 「良い喫茶店あるんやけど、一緒に行かへん?」

 と、ヒロを誘ってみた。

 「えぇけど……どしたん、急に」

 確かに、行き成り友達を喫茶店に誘うのは珍しかったのかも知れないが、そんな事なんか気にならない位に美味しいし、雰囲気が良いんだからしょうがない。

 「最近ズット行ってる店。かなり良いで!」

 更に売り込んだ。

 「常連なん?」

 それは、どうだろう?

 店員の顔も覚えているし、注文するのは毎回アイスティー、座る場所も同じ……これは、もの凄く常連っぽい!

 けど、何年も通っている訳じゃないから、常連と言うよりも、最近良く来る人。程度かも知れない。

 「常連ではない……かな」

 歯切れの悪い返事をした事で、ヒロはハテ?と首を傾げてしまった。

 「じゃあさ、注文する時に、いつものって言うてみて」

 あぁ、それでアイスティーが出てきたら、それは確かに常連だ。

 だけど、そんな恥ずかしいマネが俺に出来る筈もない。

 「嫌や」

 「じゃんけん3回勝負な。俺が勝ったら、いつもの。やで」

 こうして負けられないじゃんけんが始まって、即効で終わった。

 結果は、俺のストレート負けである。だから、もう1回。と、頼んで泣きの1回をやったのに、それもストレートで負けてしまった。

 合計6回連続でジャンケンに負けたのだから、もう、いつもの。と、注文しない訳にはいかない。

 覚悟を決め、喫茶店まで向かい、大きく息を吸ってから中に入って1番奥の、いつもの席へ。するとスグにやってきた店員。

 この人は、良く見る人だ!

 大丈夫かな?

 週に3日来ているし、知っている店員だし……いけるかな?

 恥ずかしいけど、勝負に負けたんだ、言うしかない!

 「ご注文はお決まりですか?」

 ニッコリと笑顔の店員は、俺の方を見ている気がする。

 「じゃー、俺ホット」

 ヒロがホットコーヒーを注文した後、一呼吸入れ、ついに俺は声に出した。

 「あ……あの、いつもの……」

 声に出した瞬間、カァーっと頭に血が昇る。

 想像していたよりも、もっと、ズット恥ずかしい!

 チラリと視線を上げて店員の顔を確認して、更に恥ずかしくなって、俺はもう、ただ帰りたい衝動に駆られてしまった。

 何故なら、店員は、首を傾げていたのだ。

 やっぱり、ちょっと通っただけで常連を名乗るなんて、おこがましかったのだ。だったら、このまま俺を思い出さないでもらおう。

 そうでないと、更にいたたまれなくなる。

 「えっと……あの、コーラください!」

 俺は、普段は注文しないものを注文する事で全くの別人を装い、出されたコーラを一気に飲み干し、遠慮もなく笑っているヒロを連れて喫茶店を早々に立ち去った。

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