キスマーク
カラオケボックスの中、俺はタムの首筋に吸い付いていた。
「もっと強く吸うねん」
横にいるヨネゾーからはそんな指摘があり、ヒロはそんな俺達を撮影中だ。
タムとは一応友達と言う事にはなっているが、小学生の頃に受けた軽いイジメのせいで恐怖の対象以外の何者でもない。なのにこうして首筋に吸い付かなければならないのは、かなりの屈辱だった。
なぜこのような惨劇になったのか、それはタムとタムの彼女の喧嘩の原因にある。
タムが彼女と夜の営み的な雰囲気になり、軽装著しい姿になった時に問題が起きたという。
なんと、彼女の首筋にくっきりとしたキスマークが付いていたらしいのだ。
彼女いわく、友達にフザケて付けられた。
その言い分を信じられなかったタムは激怒。そして仕返しとばかりにキスマークを付けてくれ。と、俺達に頼んできたのだ。
と言う訳でカラオケボックスに移動し、1番点数の低かった奴が付けようと言う事になった。
ちゃんと俺が付けた事の証拠撮影をしているヒロが、近付いてくる。
「もっと強く思いっきり」
ヨネゾーと似たような事を言われるが、コレでも一生懸命吸っている。それにだ、キスマークなんて付けた事が1度もないのに、急にしろと言われてもハードルが高過ぎる。
「よ~見ときや?こーやで」
と、ヨネゾーは自分の腕にヂュ~っと吸い付く。そしてしばらく吸い付き、唇を離すと、くっきり、ハッキリと痕が残った。
そうか、そこまでしなければならないのか。
こんな労力をただフザケたと言うだけでやるだろうか?そもそも首に吸い付く行為が異常だ。
と言う事は、かなりの高確率でタムの彼女は……蚊にでも刺されたのだろう。




