姉の学校
3歳の頃に今の家に引っ越した。と言う事は、姉はその時8歳で小学生だった。
まだ幼稚園にも満たない俺は1日中家の中やその周辺、または隣の家で遊ぶだけで良かったのだが、当然姉は通学しなければならない。
学校が遠かったのか、それとも他に原因があったのか、姉は毎朝母の自転車の後ろに乗って通学していた。
「いややぁ~~~!行きたくない~~~!!」
今でもハッキリと思い出される姉の絶叫は、知る限り毎朝聞こえてきていた。だからと言って姉がイジメに遭っていたとか、そう言う事実は聞いた事がない上に、学校で姉はなんと、大人しくて勉強も出来るスポーツ得意な生徒だったらしい。
地毛から少し栗色な姉は、学校から「地毛である証拠」を求められる程で、まさに才色兼備だった。
そんな姉が恐怖の表情を浮かべながら「行きたくない」と拒絶する学校と言う場所に興味を持った俺は、毎朝姉が絶叫する頃に外に出て母が出て来るのを待った。
素直に言って連れて行ってもらえる訳もないので隠れてコッソリ後をつけたのだ。しかし相手は自転車、3歳児の足で追いつける筈がない。
それでも諦めきれなかった俺は隠れると言う事を止め、毎朝自転車を走って追いかけると言う奇行に出た。
もちろん、目的地である学校に辿りつけた事など1度もない。