振り子の実験
振り子を落とした先にゴム製だったか、木製だったかの玉を置いて、振り子の力を受け取った玉を四角の積み木に当てる。その積み木が何センチ動くかを振り子の強さ毎に記録する……という地味で、実験するまでもなく答えが分かる理科の実験授業があった。
とは言っても何センチ動いたのかを記録したプリントは提出しなければならないので、適当に書く訳にもいかない。
理科の教師は1度の説明で実験内容を把握し切れなかった生徒の為に2回目の説明を始めたというのに、それでも理解出来なかったらしく、1人の男子がプリントをヒラヒラ振りながら、
「どんな実験するって?」
と、俺に尋ねてきた。
この男子とは同じ班だったので説明しない訳にもいかないし、後2人いる筈の班のメンバーは実験時間開始と共に他の班にいる友達の元に行っての私語に勤しんでしまったので人任せにも出来ない。
最後の方でプリント見せて。と言われそうなので、1度書いた字を消して綺麗に、丁寧に書き直しつつ、男子に実験内容の説明をする。
「振り子で玉転がして、進んだ距離測るだけ」
と。
プリントを書き直しつつ、男子による実験結果をプリントに書いていると、途中で物凄い事に気がついた。
男子の実験報告がセンチメートルではなく、メートルでされるのだ。
恐る恐る顔を上げて、振り子を落とす様子を見ると……振り子に当てられた丸い玉が机から転げ落ちて床を転がっていくではないか。そしてそれを定規を使って測る男子。
玉を積み木に当てて、積み木が動いた距離を測る。と説明し忘れてしもた!
「ちょっと、待って。えっと……」
なんと説明しよう……。
「後2回で終わりやで!この実験めっちゃ大変やな」
メジャーならまだしも、メートル単位を定規のみで測っているんだから、それはそれはもう大変だろう。
「あー、めっちゃ転がってくし、後の2回は測定不可にしとこか」
「そやな」
よし、これで良い……筈がなく、
「自分らなにやってんの!?全然違うやん!」
授業終了の少し前に戻って来た女子により、正確な実験のやり直しがなされましたとさ。




