修学旅行のしおりに短歌
修学旅行2日目は大山への登山。
1日目のスタンプラリーが終わり、バス移動をして宿に向かう途中、その姿が見えてきた。
少し霧がかった景色にドカンと聳え立つ山。
本当にアレに登るのだろうか?
「アレじゃないよな?」
バスの中ではカラオケ大会が行われていて、歌っていた生徒がマイクを通してそんな事を嘆くと、まだ山の存在に気付いていなかった生徒らが一斉に窓の外を眺め、
「ちゃうやろ~デカ過ぎやん。登れる気ぃせんし」
と、現実逃避的な言葉を漏らす。
バスの中がザワザワとし始め、それを見兼ねたのか体育教師が、何処となくドヤ顔にも見える爽やかな笑顔でこう言った。
「アレや」
修学旅行のしおりには、その日に起きた事、心に残った事を川柳や短歌にして残せという国語の課題があり、俺はそのバスの中でしおりにこう書いた。
「バスの中 見える大山 ただ願う どうか明日は 晴れないでくれ」
その願いが微妙に通じたのか、翌日の天気は霧雨。
しかし、残念な事に登山は決行された。




