修学旅行の仮装大会
修学旅行2日目に行われたレクレーションに、仮装大会というものがあった。
レクレーション執行委員に「出て」と言われた不幸な生徒らは、そのレクレーション執行委員が提案したバニーやらナース、海賊や吸血鬼といったコスプレをする事になった。
そんな中、俺が着せられたのは至って普通の制服だった。
俺に制服を貸してくれた子は、そのまま俺の制服を着ており、単純に制服交換しただけの手抜きコスプレである。
こうして着替え終えた出演者達は自分の出番が来るまで旅館の廊下で待機する訳なのだが、旅館自体を貸し切っている訳ではないので時々一般のお客さんが通りかかる。
「うわ~俺もっさ見られてる気がするわ」
と、頭にウサギの耳を付けたバニーが言うと、横にいるナースは、
「目立つし、そら見られるわ」
と、ツッコミをいれている。
「木場、普通~」
俺の横にはパーティーコーナーに売っていそうな、かなり雑なメイド衣装を着ているタムがいて、俺の姿を鼻で笑った。
「向こうのコスプレ見た?」
「見た見た、海賊と吸血鬼とオペラ座の怪人と制服やで」
「向こうばっかセコくない?」
廊下で軽く愚痴大会が開かれ、突拍子もない提案が出てきた。
このコスプレ大会は偶数班と奇数班の対抗戦になっていて、出場しない生徒達はより良いと思った方に票を入れ、3勝した方の勝利となる。
勝利した所で特に何もなかったのだが、可笑しな方向のコスプレを余儀なくされた皆は、せめて勝ってやろう。と、妙なスイッチが入ったのだ。
廊下で、勝つにはどうすれば良いのかという会議を始めた俺達は、案外即効で1つの答えを導き出した。
お色気作戦でいこう。
「網タイツちょい破った方がえぇんちゃう?」
と、バニーの網タイツをちょいちょいと破るメイド。ヒールのない靴を履いていたナースと、無駄に高いヒールを履いていたバニーの靴を交換し、メイドのズラをストレートロングからツインテールにして。
「木場はボタン開けて」
地味な注文だなと思いながらプチプチボタンを外す。
「おる!こーいうのんおるわ!」
バニーに指差されながら笑われているが、滑稽な姿をしているのはどちらかと言えばバニーである。
こうして始まった仮装大会。
1番に出て行ったのはバニーで、壇上に上がった瞬間からとんでもない程の笑い声が聞こえてきた。
「無駄に足キレイし!」
そんな歓声に廊下にいる俺達まで笑いが止まらない。
次に出て行ったメイドは、恐ろしいまでの裏声で、
「お帰りなさいませぇご主人様ぁ~」
と言ってウケを狙った。
3番目は俺、恐ろしい位にリアクションがなかったので、何気に1番恥ずかしい思いをしたに違いない。
そして最後に出て来たのはナース。
廊下で作戦をしていた時にバニーと交換したヒールではなく、普通の靴を履いていた。その代わり、壇上の中央までソイツはムーンウォークでやってきたのだった。




