師匠
分かりやすく明確な恋の病の症状を表し始めたヨネゾー。
どうしたのか?と尋ねまくる俺達に始めは黙秘していたが、ついに悩みを打ち明けてきた。と言っても当然恋の悩みである。
「実は、好きな人出来てん」
俺達の頭にはきっと同じ単語が浮かんだに違いない。
「それは分かってる」
それを口にしたヒロは、話の続きを催促するようにヨネゾーの前に座り、俺とタムはそれぞれ左右に座った。
場所は、俺達しかいない放課後の美術室である。
半分冷やかしに似た尋問をしていると、終にヨネゾーは意中の相手の名前を教えてくれたのだが、その途端俺達はヨネゾーが恋の病を拗らせてしまった理由を知った。
意中のお相手は、1年の頃に同じクラスだった女子で、自他共に認める程の完璧な腐女子だったのだ。
BL小説を書いた一件で世話になりまくった師匠とも言える女子は森山(仮)と言う。
森山と付き合ったら、毎日ネタにされてしまうだろう。
しかし、ヨネゾーの思いは本気で、俺達に無償の協力を要求してきたのだ。
友達にここまで言われて協力しない訳にはいかず、俺達はかなり真剣に作戦を立てる事にした。
「目立って注目浴びて、見直されるってのは?」
タムは、どこかフワッとした提案を口にしたのだが、そもそもその具体的な内容を話し合っている最中だ。ヨネゾーが誰を好きなのかという事には興味はあったが、協力する事に関しては面倒臭いのだろう。それに、森山に関わりたくないという思いもあった筈だ。
さて、注目を浴びる方法。
同級生に存在していた腐女子は、それぞれがお気に入りキャラというのか、お気に入りのカップルがあったようだ。
そのお気に入りが、同級生だと言うのだから恐ろしい。しかし、お気に入りに選ばれるというのは、それだけその女子に注目されているという事でもある筈。
そこで、俺達は森山のお気に入りキャラを調べる事にしたのだった。
話しかけるのにもっともそれらしい口実を作る為、BL小説第2弾を書く事にした。と、嘘企画まで立ち上げて。
「お気に入りキャラって、どーやって決めたん?」
流石ヒロ、かなり自然な流れ且つサラッと質問を繰り出した。
すると森山は結構真剣に、ウケ側をイジメたい時や、ただただラブラブな様子を書きたい時、三角関係やらややこしいのを書きたい時には、そのそれぞれで登場人物を決めるポイントがある。と、結構細かな授業を始めた。
森山のお気に入りは特定した人物ではないのか。と、思った矢先、
「ヒロ君ウケにしたら、セメなんか巨人族しかおらんやん?」
とか大袈裟に言うもんだから、俺達は一旦笑う事で忙しくなってしまったのだった。




