不審な青年
それは涼しさを求めてゲームセンターに入った時の事。
1階にあるUFOキャッチャーを見て回りながら緊張感を如何にか誤魔化し、思い切って2階に続く階段を上ったのだが、2階の様子をチラリと見ただけで1階に戻ってしまった。
その時2階のゲームコーナーは大変賑わっており、とてもじゃないが入っていける雰囲気ではなかったのだ。
しかし、ゲームをしている人の中には知り合いもいたので、挨拶くらいはした方が良いのだろうか?と再び階段に足をかけるが、上から聞こえてくる声に怖気づいて1階に戻った。
そんな事を何度か繰り返していると、1人の男性と異常に目が合う事に気付く。
知り合いだっけ?と記憶を辿るが、見覚えがない。そんな男性に見つめられれば酷く居心地が悪くなり、俺はゲームセンターの外にではなく2階に助けを求めた。しかし、男性は2階にまで着いてくる。
何をどう思っても怖いので、ゲーム観戦をしていたシマ君さんの隣に非難した。すると、
「やってみる?」
と。
促されるまま椅子に座って100円投入したが、対戦ゲームをした事がないので、
「超技いけるで!」
とか言われても良く分からないし、
「ワイン持ちのが出しやすいで」
とか言われても全く分からない。
100円がアッと言う間に終わって立ち上がってみれば、先程の青年が真後ろに立っている。
ビックリしている俺を他所にシマ君さんは、
「おっ、久しぶりー。対戦してみ」
とか言いながら青年を向こうの台に座らせ、俺にも椅子に座るように言ってきた。
こうして名前も知らない青年と対戦する事になったのだが、どうやら俺達は同じ位の腕前だったらしく、ついついうっかり楽しんでしまった。
ゲームが終わった後は外のベンチに座っての雑談。そこで俺は青年の怪しい行動の全てを理解する事になった。
青年は、俺がシマ君さんと一緒にいる所を何度か見た事があったらしく、声をかけるかかけないか悩みながら俺を観察し、話しかけるタイミングを伺っていたらしい。




