折る
ピロリロリン♪
メールが来た事を知らせる携帯。
誰からだ?とも疑問にも思わずに無視する。
するとまたしばらくすると、
ピロリロリン♪
メールが届いた。
面倒だけど、見るしかない。
携帯に視線を落としてみれば、
“今ファストフード店”とか“美味しいー”とか。別に知らなくても良い状況報告がされていた。困るのはこれに対する返信で“へぇ”位しか思いつかない。
送り主は自称俺の恋人。
携帯を貸して。と言われて貸していた1ヶ月もの間、俺の携帯を使って浮気をしていた恋人に対し、俺はハッキリ別れて欲しいと告げた筈だった。
それなのに。
ピロリロリン♪
細かい状況報告が来る。浮気相手のダレカサンに向けて打っているつもりなのだろうか?それとも浮気はしてないとか言う証拠のつもりか?
なんにしたってこんなにも頻繁にメールを送られたら窮屈に感じてしまう。
常に返信の事を考えなければならないのは、拷問に近い。そもそも別れた筈の元恋人から頻繁にメールが来るってだけでも充分なホラーだと思う。
そしてその日がやってきた。
授業中に携帯が震えたので、コソッと見てみると“授業中~”とのメールが届いていたのだ。
知ってるし、俺もだし。
携帯を没収されたくはないので、返信もせず携帯をポケットの中に戻した。
その授業が終わった直後、教室に駆け込んできたのは元恋人で、
「無視する事ないやんか!」
と、攻めるようにガクガクと揺らされた。
面倒臭いな……。
ポケットから携帯を取り出した俺は、パカッと開けた後両手で持ち、本来曲げてはいけない方向に向かって折り畳んだ。
バキッ、パキッ。
思ったよりも軽い音が響いた。




