接触
携帯の電源を切ったまま2日間を過ごした。
流石のヤツも家の電話にはかけて来なかったし、ヒロ達はよほどの事があった時は家の電話にかけてきてくれたので、何も不自由せずに携帯の電源を切りっぱなしで過ごせた。
そうして久しぶりにつけてみた携帯の電源。
1日目、2日目、3日目と、不審な電話はかかって来ない。
やったか?と思ったが、そんな簡単ではなく、4日目に着信音が鳴った。
「……もしもし」
少し考えて出た電話。相手はもちろんアイツだ。
「やっと繋がった」
「何の用事?」
好い加減にして欲しいんだけど!
「今度、会いませんか?」
絶対嫌ですけど!?
いや、待てよ。会って直接迷惑をしていると訴えた方が良いかも知れない。直接なら不意打ち機械音攻撃もないし、会話強制終了される事もないし、良いかも知れない!
「じゃあ……明日」
こうして駅前のファストフード店前で会う約束をした訳なのだが、約束の時間、1時間待っても、2時間待ってもそれらしい人物は現れなかった。それどころか、それ以降電話もピタリと止んだのだ。
会う約束をするまでの遊びか何かだったのだろうか?
それにしても、可笑しな体験だった。
こうして再び薄れていく恐怖心。
それは、中間テスト前の事。
俺はテスト勉強もせずに古本屋に行って立ち読みをしていた。
面白い本を読んでいたので、笑いを堪えながら、それはそれは有意義な時間を過ごしていたのだが、目の端にズットチラチラ映る黒服。
立ち読みをしている訳ではなく、本を探している様子でもなく、ただウロウロとしているのだ。
本を読み終え、次の本を手に取ろうとした時、
ポン。
肩に手を置かれた。
ビックリして振り返ると、ズット目の端にいた黒服がいて……、
「○○高校の、SINさん……ですよね」
その声は、電話のヤツの声に似ている。
「……そうですけど……」
「えっと……テスト、頑張ってくださいね」
ニッコリと手を振ったヤツは、俺の返事も待たずにそのまま本屋を出て行った。
それ以降姿を見る事も、電話かかかってくる事もなかったのだが、着信音に対しての恐怖心だけは何故か残ってしまった。




