冷めた
夜の10時を過ぎた頃だったか、俺の携帯に1件の留守電が入った。
俺の携帯番号を知っているのは家族か、ヒロかヨネゾーか恋人。タムは知っていたのかも知れないが、かかってきた事はなかったと思うので不明。
なので、留守電にメッセージを入れられるのはそのうちの誰かでなければ可笑しいのだが、留守電に入ったメッセージを何度聞いても声の主が分からない。その上、俺の名前以外の名前を呼んでいるので間違い電話……ではなかった。
このダレカサンが親しげに呼んでいるのは、俺の恋人の名前。
何故俺の携帯に?
答えは簡単で、恋人は俺の携帯でこのダレカサンと連絡を取り合っていたのだ。
何のために?
後から知った事にはなるが、お互い恋人がいた中で連絡を取り合っていて、自分の携帯からだと履歴に残ってマズイので、俺の携帯を使っていたと。
ようは、浮気されていた。
入っていた留守電も浮気の証拠になるような内容だったので、早速恋人に連絡をしてその内容を一言一句間違える事無く伝えた。
可笑しいのは悔しくも悲しくもなくて、ダレカサンに対する怒りも出なかった事。代わりに出たのは、
「別れてください」
声に出した後、妙にスッキリしたのを覚えている。




