ラブレター
登校した俺の上履きの上に1通の手紙が置かれていた。
綺麗な4つ折にされた白い紙の中央には、放課後食堂前に来い。と書かれてあった。
果たし状?
こうして落ち着かない1日を過ごし、放課後。
食堂前には1人の生徒が立っていた。
同じクラスではないので顔は知っているものの喋った事はない。という、結構遠い存在の生徒だ。そんな相手から果たし状!?
いや待てよ、この生徒はA組だから、もしかしたらヒロ達に会いに行った時にぶつかったとか……迷惑をかけたとか?
「来てくれてありがと……。これ、1人で読んで」
生徒はそう言ってハート型のシールで封をされた、どっからどう見ても完璧なラブレターを俺に突きつけて走り去ってしまった。
ラブレターらしき手紙を素早くポケットに入れ、最寄りのトイレ個室に駆け込む。
なんとなく丁寧に封を開け、ドキドキしながら中に入っていた手紙を取り出す。
それは、間違いなくラブレターだった。
それは、人生で始めてもらったラブレターだった。
「ふふっ」
それなのに、俺は少し笑ってしまったのだった。
手紙の書き出しが「あなた」ではなく「あなな」になっていたから。




