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骨折ブーム
中2の夏休み明け、不意に骨折ブームが訪れた。
わざと骨を折るという訳ではなく、事故などで折ってしまう生徒が多発したのだ。
壁に足の小指をぶつけて骨折した子を始め、自転車で車に跳ねられて左足を骨折する子、鉄棒にぶら下がろうとして失敗した奴が腕を骨折。
多発とは言ったが、たったの3人。
しかし、骨折していた時期が重なっているのでブームと呼ばれるようになったのだ。
ギブスをしている3人は廊下を歩く時両側に付き添っている友達が大勢いて、まるでアイドルのような扱いを受けていた。
「う~」
授業中、腕を骨折しているアイドルはそう唸りながらノートをとり始める。腕が痛むとかそういうのではない、ものの見事に利き腕を折った為、ノートに上手く字が書けない事に対する苛立ちの唸り声である。
「竹上―(仮名)黙って書けー」
アイドルに対し、先生だけは非情であった。




