心が折れた
細々とカズマとバンド活動を続けていたある日、突然カズマの髪色が金髪になった。
夏休みに入っていたので形からバンドマンを目指したのかも知れない。
こうして俺も赤色に染めてみようと思い立ったのだが、髪が長かったのでズラっぽく見えてしまうのではないかと思い、床屋に足を踏み入れた。
美容室やサロンでは敷居が高過ぎたので、本当に地元の、ご近所にある床屋。
スッキリ短髪になった所で家に帰り、既に買っていた脱色剤を頭に塗りたくって40分ほど放置、完全に色は抜け切らなかったがそこから赤色のヘアカラーを入れてみた。
真っ赤にしようとしていたのに、茶髪に赤を入れた結果、エンジ色よりも少し赤が強めの、ワインレッドと言うのか、そんな色になった。
多少控えめにはなったが、誰が見たって赤色の髪。ギターを構えるとバンドマンにしか見えない。筈!
キラと決別してからはカズマの家に集まっていたのだが、その日は思いがけない来客があった。それはカズマのお兄さんで、ギターで弾き語りのできる上級者!
「え?なに金髪?」
お兄さんはカズマの髪を見て大笑いしつつも部屋の中に押し入って来ると、置いてある楽器から察知したのだろう、どんな曲をしているのかと聞き、それでカズマは兄にヘッドフォンを差し出した。
キラの意向でビジュアル系を目指していたので、その当時に作った曲は当然とかではないし、ロックともかけ離れたものだった。
「なにこれ、全然なってへんし」
と、ぼろくそに言われた。
あからさまにムッと顔をしかめたカズマだが、スグに俯いて音源強制停止。何の音も出さなくなったヘッドフォンをなんの興味もなさそうに外したお兄さんは最後に、
「自分等辞めた方がえぇわ」
と、言葉を残して去っていった。
俯いたまま、静寂。
俺達の曲は誰にも受け入れてもらえないのだろうか?
バンドを続ける意味はあるのか?
キラも俺達があまりにも音楽のセンスがないから他にバンドを組んだのではないか?
合唱団に所属していて音楽センスのあるキユウは、俺達と文化祭に出るのを頑なに拒否した。それは俺達があまりにも……。
心が、折れてしまった。




