隣の双子
隣には小学校に通う双子の兄弟が住んでいた。
今でも名前を思い出せる位には仲が良かったと思う。
出来るだけ他人と拘わらないように過ごしていた俺を、その兄弟はしつこいまでに遊びに誘ってきた。
「出てこいやー」
「遊ぼーやー」
そう言いながら2人はチャイムを連打する。そうすると「五月蝿い」と怒る母と祖母に促されて俺が外に出される事を知っていたのだろう。
闘争心が強い2人は事ある毎に「どっちが上か」と競い合いをしていて、俺はその審判として呼ばれる事が多かったように思う。
「今日は木登りやな」
どっからテーマがふって来るのか、大体は突発的に競い合いが始まる。
2人同時に始め、大体は似たような結果になり、2人揃って俺に詰め寄り、
「どっち!?」
と聞いてくる。勝敗をつけてしまうと負けた方が「じゃあ次はコレだ」と新しい勝負が始まるので、大差が付いていない場合は毎回引き分けと言う事にしていた。
そんなある日、俺は水疱瘡になり完全外出禁止の1週間を過ごす事となったのだが、その間に何度かチャイムの連打があった。
水疱瘡が治ったら心行くまで競い合いに付き合おう、と思ったかどうかは思い出せないが、遊びに誘ってくれている事に対してとんでもない感謝の気持ちを抱き始めていた。
そして水疱瘡が完全に治り、2人が遊びに誘ってくれるのを待っていると、チャイムが1回だけ鳴り、窓から外を見ると2人が手招きしていた。
余りにも静かな事を不思議に思いながら外に出ようとしたのだが、玄関を出た所にある溝に得体の知れない生物が1匹。
今思えばただのナメクジなのだが、当時の俺には未知の生物であり、どんな動きをするのかも分からない恐怖の対象だった。
「出てこいやー」
そう2人は手招きするが、2人の所に行くにはどうしてもナメクジのいる溝を跨いでいく必要があった。
跨いでいる最中に飛び跳ねて攻撃してくるかも知れない。
そんなありえない可能性まで想像して、結局その日は2人と遊ぶ事を断念した。
明日遊べば良い。そう軽く考えていた。
しかし、その日を境に2人は俺を遊びに誘わなくなり、外で顔を合わせても手を振って挨拶をするだけになった。
そして俺が小学校にあがる前、2人は何も言わずにいなくなった。




