ヴォーカル
ヴォーカルを決めよう。そんな訳でやって来たカラオケ。
キラはヴィジュアル系の曲が好きなのか、特徴的なクセの強さで歌い上げては満足気にしていた。
キユウは合唱団出身なので歌は上手い。のだが、声はかなり小さい。呟くような歌声は静かな曲を歌うのに適しているだろう。
カズマの歌声は、かなり高音でヒョロっとか細い。音痴ではないのだが高音で不安定に揺れる声は聞いている者の精神を不安に落とし入れる効果を秘めていた。
そして最後に俺。
カラオケ自体あまり来た事がない上に、歌声を始めて聞かせる人が一気に3人もいる。まともに歌える筈もなく、ほぼ無音。と言う散々な結果に終わった。
何度か順番が回ってきて徐々にちゃんと歌えるようにはなったものの、キラの中では誰をヴォーカルにするのか答えは出ているようで、途中から人の歌は聞かず、
「俺ギターやのにヴォーカルまで大変やわーコーラスも俺ぇ?ライブどーすんねん」
と、1人で想像を膨らませては楽しんでいた。
カラオケ店の前で解散となり、去って行くカップル。その後姿を眺めていたカズマは、何故それを言おうと思ったのか、俺にとんでもない告白をした。
「俺な、キユウが好きやねん」
どうやら俺は三角関係と言うややこしい輪の中に入ってしまったらしかった。




