バンドしよう
放課後、隣のクラスの女子に呼び止められた。
小学校時代に「トントン」とあだ名を付けられていた合唱団に所属している女子だ。
ここまで1度も話した事がないというのに、何の用事があるのだろうか?まさかまた軽いイジメでも始まるのだろうか?
少し身構えていると、トントンは俺の前で両手を合わせた。
「一緒にバンド組んで」
突拍子もない願いだったが、あまりにも熱心に頼まれたので引き受ける事に。
親父がギターを持っていたので、それを使えば練習が出来るだろうと考えたからだ。
メンバー紹介をすると言うので連れて来られたのはリーダーと思われる男子の家。
リーダーはベッドの上でゴロゴロしていて、トントンはベッドの上に座ってただニコニコとリーダーを眺めている。
「あ、前の席の目付き悪い人やん」
そんな声に机の方を見ると、1人の男子が腰掛けていた。
言われて見れば同じクラスだ。
「やっぱあだ名から決めなアカンよな」
パート決めではなく、先にあだ名なのか!?
そんな事はお構いなくリーダーは自分を「キラ」と名乗り、トントンは「キユウ」。同じクラスの男子は「カズマ」と言った。
俺はー…。
「そのままで良いです」
「ん、分かったミスギやな」
どうやら俺は、キラとキユウの方をチラチラと見過ぎていたようだ。




