校長に会う
放課後の美術室、2人の先輩と俺とヨネゾーとヒロと、タム。
放課後までにヒロから話を聞いていたらしいタムは、もう既に部員として美術部に来たようで、誰もが気になった事をサラッと口にした。
「顧問は?」
すると今まで俺達に興味すら示さなかった2人の先輩がツカツカと歩いて来て美術部について教えてくれた。
ちゃんとしたクラブではない事、部費が一切出ない事、放課後に美術室を使う許可だけは取れている事。
何故こんな緩い部が成り立っているのだろう?との疑問しか残らない説明だったのだが、先輩達は更に、期末テスト前に辞める事を告白した。
「まぁ、今日が最後って事やから」
どうやら美術室に後輩が増えた事で居心地が悪くなっていたようだ。
後はよろしく、と出て行った2人の先輩だが、何をどうやれば良いのかが全く分からない。それは元々美術部員だったヨネゾーも同じだったようで、しばらく黙っていた。
「部費は欲しいよな?」
と、タムが言うと、
「先に顧問やろ」
と、ヒロ。
まさに手探り状態。とりあえず生徒だけで話していてもしょうがないと思い、職員室に向かった。
放課後のこの時間、受け持つ部活動のある教師は職員室にはいない、だったら職員室にいる教師の中から良さそうな人材を顧問として引き入れよう大作戦だ。そして目に留まったのは国語教師。
「なぁ、美術部作りたいから顧問になってや~」
俺達の中で国語の点数が1番良いヨネゾーが国語教師の真正面から頼み込んだ。そのお陰なのかどうなのか、国語教師は俺達を校長室にまで案内した。
コンコン
ノックをする国語教師、中から返事があってからドアを開け、一礼する国語教師。俺達はその真似をして校長室の中に入り、進められるがまま部屋の奥に行き、座り心地が恐ろしく良いソファーに座った。
「美術部を作りたいんやって?」
マイクを通さない生の校長の声を聞いたのはこの時が初めてだった。
「はい!部員は僕らだけですけど!一生懸命やります!」
極度の緊張からなのだろうか、ヨネゾーがまるで小学生みたいな喋り方で意気込みを語る。
「君が部長?」
俺もヨネゾーが部長だと思っていたし、きっとヒロもタムもそう思っていた筈だった。なのにヨネゾーの答えは違っていて、
「まだ決めてません」
だった。




