部員確保
放課後の美術室には、2人の先輩と俺とヨネゾー、そして今から勧誘するべく連れてきたヒロの5人がいる。
先輩2人は個人的な話をしてらっしゃる最中なので俺達には興味もないのか、チラリともこっちを見ない。
「帰宅部なんやろ?やったら入ってや」
ヨネゾーがヒロを口説いている間、俺は椅子に座ってボンヤリと外の景色を眺めたりした。美術室は校舎から少し離れた場所に独立して建っており、窓からの景色にグランドはどうやっても入らない。
遠くから聞こえて来る吹奏楽部の楽器の音色と暖かな日差し、高さが丁度の机とくれば後はもう転寝をするしかない
「寝るな寝るな!」
頭を叩かれて顔を上げると先輩の姿はなく、少しばかり本当に寝ていたようだ。
「美術部?」
ヒロを指差しながら言ってみると、ヒロはヨネゾーの口説きに落ちず、美術部に入る気はなかったようで、首を振った。なので、
「次期美術部部長?」
と、言いながら指を差し続ける。
「なんで悪化してんねん!」
悪化との表現はどうかと思いながらも、まだ首を縦に振ろうとしないので更に、
「後1人、どうする?」
と、話を強引に進めた。
「帰宅部の知り合いおらんわー」
ヨネゾーも俺の隣に座り、話を進める。そしてヒロに向ける熱い視線。するとやっと諦めたのか、ヒロも椅子に座ると、
「タムは?」
と、意見を出した。
「アイツ吹奏楽部やで」
「え?吹奏楽やったん?楽器は?」
「さぁ?」
「見に行こか」
こうして美術部を一旦置いて吹奏楽部が練習をしている音楽室に向かったのだが、校内の彼方此方には楽器を手に個人練習をしている吹奏楽部の面々がいる。
渡り廊下まで来るとラッパを持った数人が固まって練習をしていて、タムを探すのが面倒になったのだろう、ヨネゾーがラッパ集団にタムの事を聞きに行った。
そして俺達は素晴らしい情報を手に入れる事になった。
タムは、吹奏楽部だったが、幽霊部員だったのだ。




