赤い歴史 ※
タムの家にヨネゾーと共に招かれた時の事、そこにはタムの彼女と、その彼女の友達もいて、俺を合わせて5人いた。
少し病んでいる方がモテる。
そう中二病っぽい事を本気で信じていたらしい女子2人はカバンの中にカミソリを入れていて、時々それを取り出して刃を手首にあてていた。
タムは、この彼女の行動を止めさせようと色々奮闘しているようで、その行為が可笑しい事を第三者の俺とヨネゾーに指摘して欲しい。という願いをもっていたらしい。
しかし、俺は全く逆の行動を取ってしまったのだ。
切欠は彼女のこんな一言、
「その戸の下にある赤いシミ、アレは私の血」
指差されている所には綺麗な赤色のシミが1つ。
誰が見たって絵の具かなにかだ。
「血じゃないですよね?」
あまりにも可笑しくて指摘すると、タムが俺の痛めている左腕を強めに掴んだ。
「あんまりアイツ刺激すんなや。アイツなら、やりかねへん」
どうやらタムまでもがこの鮮やか過ぎる赤を血だと思っているようで、俺は黙っておく事が出来なくなった。間違いを間違いだと言わなければならないと思ったのだ。
もしかしたら左腕を掴まれた事で少々イラッとしていたのかも知れない。
彼女からカミソリを拝借した俺は軽く親指の爪の付け根を切り、染み出る血を赤いシミの横につけた。
「これが血の赤ですよ」
残念な事に、部屋にいた5人の中で1番病んでいたのは、俺だったのだ。




