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多分赤ずきん
中学1年の文化祭の出し物が演劇と決まってから、やる気のある生徒が中心になって演目や配役はトントンと決まった。
そしてやる気のない生徒は小道具や大道具係となったのだが、同じ小道具係りにヒロもヨネゾーもタムもいた。
知らないうちに友達だった。そんな感覚が全く分からない俺にとって、知らないうちに仲直りしていた。などと高度な現象を理解出来る筈もなく、至って普通に話しかけてくる2人が不思議で仕方がなかった。
完全に無視をしてくるタムの反応が有難かった程。
と、ここまではハッキリと思い出せるのだが、道具係で何を作ったのか、演目は何だったのかが良く思い出せない。
多分「赤ずきん」だったとは思うのだが、それだと記憶が少し可笑しいのだ。
何故だろう、俺は「おばあさん」として演技をし、その練習の時、オオカミに襲われる時の叫び声をちゃんと出せ。と、何度も指導された記憶まである。
本番が終わった後、背中を叩いて「どんまい」と笑ったヒロの顔まで……。




