他人事
隣にいたヒロが、頭を押さえたまま呻き声を上げている。
目の前に立っていたヨネゾーも、同じように頭を押さえ、苦しそうに顔を歪めている。
俺は2人を眺めながら、特になんともせずに立っていた。
「うぅ……」
2人からもれる苦痛に満ちた声に心を動かされる事もなく、時々恨みの篭った目で見つめられても他人事だった。
それはそうだ、俺は苦しくもなんともない。
本当に他人事だ。
「お待たせー」
少しして後ろからタムがやってきた。
その手には、買ったばかりのかき氷。
ガツガツと美味しそうに食べているが、俺は知っている。もうしばらくもしないうちにタムも2人と同じ目に遭うという事を。
「うぅ……」
ホラ。
俺は頭にキーンときている3人を眺めながらカキ氷を食べている。
「なんでキーンってならんの?」
いち早くそのキーンとやらを克服したヒロが、またかき氷を口に入れながら尋ねてくる。
「1回もなった事ない。どんだけ痛いん?」
と、カキ氷をガツガツ食べてみるが、やはりなんともない。しいて言うなら口の中が冷え過ぎて感覚が鈍くなったくらいだ。
「片頭痛の痛みに似てるらしいで」
頭を押さえながらヨネゾーが教えてくれた。
分かりやすい例えだったのだが、俺は更に分からなくなる。
片頭痛は、それはそれはもう、何をどうやっても痛くて辛い。その痛みに似ているらしいキーンと言う現象。
それなのに、何故皆はキーンと来ると分かっていながらカキ氷を食べるのだろう。
暑いから氷を食べて涼しくなろうと言うのだろうか?それならば別にアイスとかジュースでも良いじゃないか。
しかし、所詮は他人事。俺は3人をマゾと言う事にして自己解決させた。




