缶のフタ
学校が休みの日、特に何の予定もなく待ち合わせたヒロと自動販売機の前で軽く喋っていた。
それぞれがジュースを買い、飲み干し、しばらく喋ってから2本目を買う。
特に理由もなく集まったのは夜中の3時。
夜中の3時まで一緒にいた訳ではなく、夜中の3時に待ち合わせて、本当に集まれるのかどうかを試したのだ。
ひやりと冷たい風と遠くに聞こえるバイクの音、そして徹夜明けの妙なテンション。
俺はともかく、一般家庭で育つヒロからしてみれば、こんな時間に出歩くなんて両親に怒られて当然の行為。なのでまず俺が徹夜をして3時にヒロの家の前に行き、着信音を1回だけ鳴らす。ヒロが起きていれば窓から降りて来る。と言う計画だ。
そしてその計画が見事成功し、勝利のジュース2本目と言う事になっていた。
しかし、ここからの作戦は何もない。
喋りながら目が閉じていくほどの強烈な眠気に耐えながら、買ったばかりの缶ジュースを眺める。
普段なら全く気にも留めない缶に書かれた文字を声に出して読む。こうでもしないと間が持たないし、眠いのだ。
「よく振ってからお飲みください」
よく振れと読んでしまったのだから振った方が良いのだろうと、もう訳の分からない事になっていて、ガシャガシャと豪快に3回振った。
「うわっ!なにしてんの!?」
隣にいたヒロがパッと飛び退き、俺の顔に何か冷たい物がかかった。
あぁ、そうだった。缶の蓋、開けてたんだっけ。




