自分でこける
堤防沿いを、自転車で走って時間を過ごす。
思いっきりこいでスピードを上げれば上げるほど、風の音で周囲の音が聞こえなくなる。その感覚が好きで、堤防沿いを思いっきり自転車で走る。
目的地は、急な坂道。
走ってきた勢いをそのままに、ブレーキもかけずに一気に下る。自分では出せないスピードが出て楽しいのだが、残念な事に坂を下りきった所にはアーチ型の車止めが5つ並んで設置されていた。
折角出ていたスピードを、ブレーキをかけて止めなければならない。
その日も、俺は坂道に向けて自転車を走らせていた。
なんだか今日はブレーキの効きが悪いな……坂道の途中でブレーキ切れたりして?
なんとなくそう感じたものの、折角ここまで自転車を走らせて来たのだからと、俺はそのまま坂道を下り始めた。
ゴォォォォォ。
風の音を聞きながら物凄いスピードで下り、半ばを過ぎた辺りからキュッキュとブレーキを、ブレーキを?
あれ?ブレーキがやけに軽い?
思いっきりブレーキを握るが後ろブレーキしか利かず、車止めまでに止まれない程のスピードを維持したまま。
何故前ブレーキが利かない?
視線を下げてみると、ワイヤーが飛び出しているのが見えた。
「ホンマに切れた!?」
ガシャーン!
俺はこけた。だけど、車止めにぶち当たった訳じゃない。




