餌代頂戴
俺が小学校を卒業したのを切欠に両親は正式に離婚した。
ある日、家の前で俺はヒロとヨネゾーの3人で喋っていた。家の中に入らなかったのは喋っている内容が自転車の事で、いつか自転車でキャンプに行こう。とか言う計画を立てている真っ最中だったからだ。
「木場っちのはマウンテンやから荷物はリュックやな」
とか、
「カセットコンロではロマンないよな」
とか喋っていると、気分はもう冒険家だ。
そんな俺達の横に1台の原付バイクが止まった。
俺の自転車の所で喋っているので、そこは完全に敷地内。不法侵入か!?と原付バイクに乗っている人物を確認すると、そこに姉がいた。
「なぁ、悪いんやけど、この子の餌代くれへんかなぁ?」
言いながら原付バイクのシートをポンと叩く姉。もう、ガラが悪過ぎる。
「えぇ!?」
紹介すらまだなのに、行き成りこんな物言いをされれば誰だって恐怖するだろう。
「千円頂戴」
姉はそう言いながら事もあろうに俺の前ではなく、ヒロの前に手を出した。
なにを考えているんだ?俺の顔を忘れでもした?それとも俺の友達だと分かった上でこんな行動を?
「は、はい」
返事をしながら財布を出すヒロを制止し、自分の財布から千円を出して手渡した。
姉はニコリと満足そうな笑顔を残し、原付バイクを走らせて去って行く。
「なぁ、あれ誰なん?」
その後姿を呆然と眺めながら、ヒロとヨネゾーは尋ねてくる。しかし、堂々と姉だと紹介するには恥ずかしく思った俺は、ただ、
「知り合い」
と、答えてしまった。




