表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SHORTで、俺。  作者: SIN
中学校 1年

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

222/485

心の薬(※)

 普段となんの変わらない授業中だろうと、就寝前だろうと、帰宅途中の道端であろうとも、それは突然やって来る。

 小さくて弾力性のあるナニカを噛み締めている状態に近いだろうか?だけど、その小さい何かは何倍にも、何十倍にも、何百倍にも膨れ上がり、噛み締めていた筈の自分が小さな虫のようにそのナニカに押し潰されそうになる。

 どうやっても抗う事の出来ない不思議な感覚。

 大声を上げたくなるし、暴れたくなる。それを必死に堪える為に自傷。その痛みがやけに鬱陶しい。

 押さえ込まなければ。

 落ち着かなければ……。

 薬に頼るのは止めていたので、別の方法で気分を落ち着かせる方法はないか?と模索していた時の事。

 突然イライラが襲い掛かってきた。それも、国語の漢字練習時に。

 ノートに何度も何度も同じ漢字を書いて覚える。と言う授業内容で、字画数の多い漢字を50回だったか、書かなければならないと言う単調な時間。

 同じ事の繰り返しで、イライラに歯止めが利かなくなる。

 1画1画書く度に字か崩れていく。

 筆圧が増していく。

 徐々に文字でもなくなり、ノートのマス目を守る事が出来なくなる。そしてシャーペンをグーで持ち、乱雑にノートの上を行き来。漢字のノートは筆圧で破け、折角書いた漢字もグチャグチャ。ソレを見てまたイライラ。

 俺はイライラを押さえるべくシャーペンを思いっきり握った。普通に握っている訳じゃない。態々ペン先が掌に刺さるようにして握り込んだ。

 パシュ。

 痛い。あぁ、痛いわ。

 手を開くと掌に浅く刺さったシャーペンがコロンと机の上に落ちていった。それと同時にジンワリと盛り上がってくる赤い液体。

 根性のなかった俺は、ソレまで自傷と言えば打撲の方だったので、内出血はしても流血する事はなかった。

 何故なのか、タラリと流れ落ちた赤い液体は、俺の心に冷静さを取り戻させた。

 トントン。

 背中を突かれて振り返ると、ヒロが小声で、

 「どした?」

 と。

 イライラに耐えていた間、少々派手に腕を動かし過ぎたのだろう、不審に思われてしまったようだ。

 「なにが?なんもないけど?」

 これ以降、俺は少しでもイラッとしたら左手親指の甘皮と皮膚の境目をナイフで切って安定液を見るようになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ