美術の先生
中学校の美術室は校舎内にはなく、校内に建っていた別の建物の中にあった。
2階建てで、1階部分が技術室、2階が美術室となっていたのだが、2階に上がる為には鍵がかかっている扉の先にある階段を上がらなければならない。しかもその扉は建物の正面にはないという、何とも怪しい構造だった。
扉を開けて中に入ると階段の裏手に出るので、そこを正面に回ってから上がらなければならない。
階段自体は大きく、吹き抜けになっていて……洋館っぽい。そんな階段の踊り場にも1枚の大きな扉があって、そこの扉の鍵は紛失したらしく、開かずの扉となっていた。
そんな不思議で魅力的な美術室の主は、美術の細木(仮)。ちょっと天然パーマなバレー部顧問の男性だ。
細木の授業は特徴的で、
「好きに絵を描け」
と、画用紙を配ってから何やら技術的な話しをボソボソと始めるのだが、画用紙を配られた時点で生徒達は私語に私語を重ねた上での私語をしながらのお絵かき時間の始まり。誰にも何も聞こえていない。
しかし、細木の本気は授業中には発揮されない。授業終了を告げるチャイムがなった瞬間に現れるのだ。
キーンコーンカーンコーン♪
「きりーつ!」
突然の大声。そして、
「礼っ!」
歯切れの良い号令。締めくくりは、
「帰れー!」
帰れ!?
初めて聞いた時は、本当にビックリした。




