友達
グランドで部活動をしているバスケ部は、雨の日は中止となる。
朝から雨が降っていたのなら昼休みには「バスケ部、なし」とクラブ掲示板に書かれているが、その日は午後の授業中から雨が降り出していたので、なしだろうとは分かっていても、一応確認に向かっていた。
体育館前の廊下にあるクラブ掲示板の前には他にも沢山の生徒がいて、活動内容の確認をしていた。その中に1人……2人、知っている顔がいた。
ヒロとヨネゾーだ。
今日はタムはいないのか。
少しだけ緊張の解けた俺は、2人を無視するように背中を向けて掲示板を確認し……。
「バスケ部も今日なしやって」
急に話しかけられた。しかも肩を叩かれながら!
振り返るとニコリと笑顔のヒロと目が合って、少し視線を外した所にはヨネゾー。目が合うと軽く手を振られたので、反射的に軽く手を振り返した。
これは……友達っぽくないか?
だけど、ヨネゾーは同じ学校出身で……でも、クラスは別だった。イジメに加担していたのは同じクラスの連中だけ。と言う事は……ヨネゾーを恐れる必要はないのかも知れない。だとしたら、俺はヨネゾーと友達に?
いやいや、それだと漏れなくタムが付いてくるじゃないか。
ボッチのままで良いのに、どうして話しかけてくるんだろう?どう返事をしたら良いんだろう。
どう反応したら良いのかが分からないから、俯くしかない。
すると、ヒロは少し屈んで俺の視界に無理矢理入ってきた。この男、身長がかなり高いのだ。
「どした?」
と、ヨネゾーまで少し屈んで視界に入ってくる。この男も、身長がかなり高い。
どうしよう?困った……ここから如何すれば良い?なんて言えば良い?
「俺……友達なん?」
2人が黙ったままだから、結構な時間をかけてやっと声に出せた言葉は、ただの疑問だった。
するとヒロは、
「今更なに言うてん!?」
と、相当ビックリしたらしく目を大きく開き、結構な音量で言った。
友達なのか?本当に?いや、でもタムとは友達になんか……いや、そもそもボッチに友達なんかいらない。
「友達ちゃうなら……親友にしとく?」
笑顔のヨネゾー。
意味が分からない。
友達ってなんだ?
親友ってなんだ?
怖いけど、何故だか嬉しくて泣きそうだ。
「……木場って言います」
自己紹介する俺に笑う2人は、
「木場っちやな。俺はヒロ」
「ヨネゾーって呼んでえぇよ」
と、背中をバシバシと叩いて来た。
気付けばいつの間にか友達だった。と言う感覚が全く分からなかった俺は、この日正式に2人の友達が出来た。




