昼休み
ボッチである俺だが、決して、決して暗い性格ではない。と、思う。
だから、贔屓される側の生徒とか、されない側の生徒とか、そんなくだらない区別がない環境に来れば、ノンビリとした生活が送れるんじゃないかと思っていた。
目立った事さえしなければ標的になる事もない。
目立つ理由さえなければ、ボッチの俺の存在感などないに等しい。
だから、大丈夫。
新しい環境に来たんだから、もうイジメなんて無縁の生活が送れる筈だ。
そう思っていたのに“コイツのオカン出てってオランねんで”
早速目立ってしまった。
後ろの席の男のあだ名はヒロ。直接本人から聞いた訳ではないが、そう呼ばれているのを日に何度も聞いていたから、興味がなくても覚えてしまった。
昼休みになるとヒロの所に米山と村田が集まり、3人で黙々と弁当を食べる。
食べている間は無言で、食べ終わった順からボツボツと会話が始まり、最後は3人でワイワイと楽しそうに会話を始める。
その間俺は眠る事も出来ず、緊張しながら姿勢良く弁当を食べていた。
それが普通になった頃、
「なぁ、前の人―」
昼休み、弁当を広げる俺の後方から声が聞こえた。
食べている最中に話し出す事も珍しいし、俺に話しかけてくる事も珍しかったのだが、同じ小学校出身の2人を見るのが嫌で、振り返りもせずに無視した。
「なぁって」
今度は背中を突かれる。流石に無視し続けるのも気が引けてきたので、
「なんですか?」
振り返らずに尋ねた。
「なんで怒ってんの?」
はい?
何?どう言う意味?
俺の態度が気に入らない。と言う大義名分を元に、また何かが始まるのか?
手元には3分の1ほど食べ終えた弁当。
緊張感で食欲が失せているので、これでも腹は満たされている。そして後ろには俺の機嫌が悪いと勘違いしている生徒が3人。
俺は弁当を鞄に仕舞ってから振り返ると、怒ってはいない事を説明した。しかし全く信じてもらえていないらしく、ムッとした顔だ。
こういう時に何を言っても無駄な事を俺は良く知っている。寧ろ言い訳をすればするほど何も信じてもらえなくなる。こんな時の正しい対処法はたった1つ、
「トイレに行くので」
退却。




