ボッチ
中学に入ってしばらくの間は、同じ小学校出身同士で集まるのが普通だろう。
そして一気に浮き彫りになるボッチ者達。
通っていた中学校は小学校2校分の生徒が集まっていたので、俺以外にも存在しているボッチは向こうの小学校でのボッチ者と言う事になるのだが、残念な事にボッチらしいボッチは俺しか存在していないようだった。
徐々に両小学校出身の生徒らが打ち解け、徐々にグループ分けがされているのを眺めながら、俺はボッチ道を極めるべくボンヤリと過ごす。
そうしながらする事と言えば、昼寝だ。
「なぁ」
昼休みのチャイムと同時に机に伏すと、誰かの声がかなり近くで聞こえた。
しかし、無視され続けていた俺にとっては「おい」とか「なぁ」の言葉は自分に向けられた言葉でないとの判断で、気にせずに睡魔の受け入れ準備を始める。
「なぁって、起きてんねやろ?」
と、背中を突かれ、流石に飛び起きて振り返った。
呼ばれているのが自分である事に驚いた訳ではなく、制服を見る為に。
突かれた背中を見るが、特に何の汚れもついていない。
てっきり……墨とか絵の具とかを付けられたと思ってしまった。
「ゴメン」
そんな事をする人物と見てしまった事を素直に謝り、再び机に伏す。
「いやいや、なにが!?つか飯は?」
弁当は持って来てはいるが、食べてから寝ると胃がもたれるので、一旦寝てから食べるつもりでいる……と、長々と説明するのも面倒になり、俺は昼寝を諦めて弁当を広げた。
「一緒に食べへん?」
また後ろから声が聞こえたので、今度はゆっくり振り返ると、そこには米山(仮)と村田(仮)と言う同じ小学校の出身の生徒もいた。
村田は5.6年の時に同じクラスで、そこそこ、大分、かなり嫌な思い出のある人物である。
「……」
返答に困って黙っていると、ヒョイと俺の弁当を覗き込み、
「自分のカーチャン料理上手いな!めっちゃ美味そう」
と、後ろの席の男は多分褒め言葉を言った。
「コイツのオカン出てってオランねんで」
すると村田が大層楽しそうに俺を指差しながら言うもんだから、俺はその顔を眺めた。
本当の事なので文句も言えないし、文句を言うだけ頭も回っていない。だけど、睨む事は出来た。




