ドブン
俺はプールの授業が大嫌いだった。
何故なら、とんかちだからだ。
泳ごうとすると沈んで息継ぎが出来ない。それでも必死に泳ごうとするから傍から見れば溺れているように見えていただろう。
どうしても顔が濡れる事が嫌だったので髪を洗う時も一苦労だった。そのくせ顔を洗う時は普通だったのだから水恐怖症でもなんでもない。
その日は小学校のプールを使わせてもらえる事になり、児童は喜んで我先にとプールの中に入って行った。
普段使っている幼稚園のプールは園児が立っても膝位までしかない安全設定だったのだが、小学校のプールでは水が抜かれていたとは言え、前にならえ!で腰に手をあてるタイプの俺では1番浅い筈の端っこですら爪先立ちになってようやく口が水面に出る位の上級者極まりないない水位だった。
そんな中、先生ははしゃぐ園児を抱き上げてプールの中に落とす、と言う拷問を始めた。泳げる園児達は放り投げられたいが為に先生の横に列を作り、ドボンと落とされては楽しそうに笑っている。
プールの端に立って出来るだけ目立たないようにしていたにもかかわらず、先生は俺に気が付き、近付いてくると高く、高く抱き上げた。
ドボンと水の中に投げ出され、パニックになる頭とは対照的に体が全く動かない。こうして俺は誰に教えられた訳でもなく自然と伏し浮きをマスターしたのだった。
しかし、
「木場君!?大丈夫!?」
先生には溺れているように見えていたようだ。




