クラブ見学
中学に入ってまず担任に言われたのは、クラブに入れ。だった。
「折角の青春、帰宅部ではもったいない!」
と、力説したのだ。
さあ、何に入ろう?
ナチュラルにボッチだった俺にはこの時友達は0人で、親しい人も0人。相談するような相手もおらず、たった1人でクラブ見学を始めた。
全く運動部に入る気がなかったので最初に行ったのは吹奏楽部。なにか1つでも楽器が出来れば良いな、とか言う軽い気分で見学したのだが、そこはかなり難易度が高いと音楽室に入った瞬間に気が付いた。
○○大会準優勝だの、銀賞だの、金賞だのといった賞状が額に入れられて飾ってあったのだ。
ソッと音楽室を出て次に向かったのは新聞部だったのだが、そこには同じ小学校出身者しかいなかった為止めた。
続いて演劇部。見学者は結構いて、顧問の先生が見学者1人1人に「おはようございます」を悲しそうに言ってみて。とか、楽しそうに言ってみてとお題を出した。
そして俺の番が近付き徐々に緊張がピークに達し始めた頃、
「犬になって」
はいぃ!?
犬?
犬ぅ!?
「おはようございます……ワン?」
3人程横にいる女子は首を傾げつつそう言った。
そういう感じで良いのか!?
「はい次、猫」
そういう感じなのか!!
「おはようございにゃうぅ」
うわぁ~。
こうして俺の番がやってきてしまった。一体どんな動物が来るのだろう?鳴き声を聞いた事がない動物だったらどう言えば良いのだろう?
「はい、犬」
なに!?
犬といえばさっき女子がやっていたではないか!
別パターンか?別パターンなのか!?
「ワワワーワワンワン」
俺は、尻尾を丸めて逃げ帰った。




