写真
写真に写る時、俺達兄弟にはそれぞれキメポーズがあった。
そして親父達は、俺達を機嫌良くさせる為に独自の掛け声を使っていた。
姉のキメポーズは腕全体でピースをしているかのようなダイナミックなモノで、両肘を付けて胸の前辺りまで上げ、軽く拳を握り、肘を付けたままパカッと開け、完璧な「V」の字を顔の前で作るというポーズだ。
その写真を撮る時の掛け声は、早口で
「ワンツースリーワンツースリーワンツ~スリィ~」
だった。
その後姉が
「グッ!」
と言いながら「V」サイン。その為幼少期の姉の写真は大半がおちょぼ口である。
弟はポーズと言うよりも癖。
自分のブランケットを噛むと言う癖を持っていた弟の子供の頃の写真には、必ずそのブランケットが一緒に写っている。
噛んだままニィっと笑っているのがお決まりのポーズ。
写真を撮るからと言って無理矢理ブランケットを取ると号泣していた弟の好物は、細長くて1袋100円程度で5本程入っている菓子パンだった。その為、
「ケーン、パンあげるからこっちおいで~」
が、写真を撮る時の掛け声である。
俺はピースサイン。
掛け声は至ってシンプルな、
「笑って笑って~」
だった。
子供の頃の写真、俺はかなりの真顔で手の甲を向けたピースサインをしている。自分で思う事は「可愛さの欠片もない」だ。




