降りる人優先
学校から帰宅し、ランドセルを置いた後は即効外に出て時間を潰してから帰る。
そんな習慣が身についてしまっていたので、毎日7時頃までは外にいた。
自転車で河川敷を走ったり、わざと道に迷って「帰られるか?」と言う遊びをしたり、快適なデパートの中で立ち読みをしたり。
冬になるとデパート率がグンと高くなったものだ。
本屋があるのは7階で、6階は文豪具や玩具。1階から5階は服や化粧品、装飾品などで興味はなく、俺は1階からエレベーターに乗って6階まで行き、文房具を見てからエスカレーターで7階に行って立ち読みをしていた。
その日も俺は6階に向かうべくエレベーターを待っていた。
上から降りてきたエレベーターは一旦地下まで下がった後1階にやって来ると、ポン♪と開いた。
さぁ、乗ろう。
そう思って1歩前に足を出すと、エレベーターの中から1人のオッサンが足を1歩前に出してきて、両者一歩も動けず!状態に。
物凄い眼光で俺を睨みつけて来るオッサンの体格はガッシリとしていて、横にいる奥さん?がかなり小さく見えた。
その小さく見える奥さんはオッサンの腕を掴んで引っ張っているが、オッサンは俺から視線を外す事はなく、
「降りるモンが先じゃ!」
と大声で怒鳴りながら俺を両手で突き飛ばし、最近の若いモンは……みたいな文句をブツブツ言いながら立ち去ってしまった。
尻餅を付いてしまった俺は、立ち去っていくオッサンの後姿と、無常にもドアが閉まり上に向かうエレベーターを呆然と眺める事しか出来なかった。
確かに、降りる者優先だから悪いのは俺の方だったのだろう。しかし、だからって何も突き飛ばす事はないんじゃないだろうか?
と、今でも少し考えてしまう。




