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SHORTで、俺。  作者: SIN
小学校 高学年

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1人旅

 近所の公園の木が綺麗な色に染まり始めた紅葉の時期、俺は1人で電車に乗り、京都までの旅に出かけた。と言っても日帰りである。

 京都に行けば綺麗な紅葉が見られる筈。とか言う無計画さで電車に乗り、乗り物酔いと戦いながら辿り着いたのは「男山」と言う山。

 石清水八幡宮のある有名な場所なのだが、当時の俺にはそんな歴史的な事よりも、綺麗な紅葉を見る。と言う事しか頭にはない。そもそもそんな有名な建造物がある事さえ知らなかった程だ。

 こうして男山に着いてみると、目の前には「男山ケーブル」と言う小さな駅があった。始めは乗ろうと思っていたのだが、小さな看板には「八幡宮へはケーブルをお使い下さい」と書かれていた。

 使えと言われたら使う訳にはいかない。

 何故だかそう思った俺は、山に続く階段を見つけ、そこから山に入った。

 人1人分しか幅のない小さな階段だったと思うし、途中から階段でもなく坂道となり、雑草が目立ち始め、手すりがなくなり。気が付けばただの獣道を1人で歩いていた。

 しかも周りにあるのは竹で、少しも紅葉を楽しめない。

 そうして獣道を進んで行くと崖の下に小さな寺が見えた。何人か参拝している人がいて、皆着物を着ている。

 ここに来る時は和服じゃないと駄目なのか!?と、今思うととんでもなくアフォな理由から慌てふためき、身を低くして足早に上を目指した。

 またしばらく進むと、獣道が二手に分かれていた。下に行く道と、上に行く道だ。

 どちらを見たって他に人はいないし、どちらに行っても鬱蒼と生い茂る緑があるだけ。

 特に考える事もなく上を目指したものの、上に続く獣道は不意になくなってしまった。踏み固められたように草の生えていない筋がなくなっただけで、目の前には斜面がずっと向こうまで続いているのだが、この先に行って戻って来る自信は少しもない。

 回れ右をして下り始めた道は、登ってきた道ではない。1本道だったのに可笑しくはあるが、見えるのだ。かなり見事に紅葉した木々が。

 フワッと風が吹き、俺の上をケーブルが走っていく。

 谷のようになっていたそこの光景は、まさに絶景。カメラを持っていたら無心になって撮影していただろう。

 そこから舗装された坂道を下って行くと、かなり大きな道に出て、後は人の流れに任せて下山した。

 結構な時間歩き回っていたので喉はカラカラ。そこへ丁度見つけた1軒の茶屋。

 甘いものが苦手で、まだ抹茶なんて飲んだ事もないと言うのに、俺は値段の確認もせずにその茶屋に入っていた。

 そこで店内を見回していると店の奥から店員さんが出てきたので、メニューに描かれた抹茶の絵を指差しながら1つ注文する。

 店内の飲食スペースに向かい、疲れた足を休めるために座ると注文した抹茶がテーブルに置かれた。

 それを普通の緑茶だと思ってグイッと飲み、その苦さにビックリするが、流石に吐き出す事も、マズイなんて言える事も出来る訳もなく、何か味を誤魔化せる物を注文しようとメニューを広げてみるが、なんと読むのかが分からない。

 それでも1番安い金額の餅を指差しながら、

 「コレ1つ下さい」

 と注文した。すると店員さんは俺の注文した物を指差しながら、

 「ん?」

 と、人差し指を1本立てた。なので「はい」と言う意味を込めて頷き、同じように人差し指を立てる。

 こうして出てきたのは、柔らかい餅でアンコを包んだ餃子のような形の餅。漆塗りの綺麗な皿に2つ並んで出てきたそれは、物凄く、かなり、甘い代物だった。

 1個食べるのだけで結構な時間がかかった程だ。

 そこで手にするのは恐ろしく苦い飲み物な訳なのだが、アンコに占領されていた口の中でそれは物凄い旨みに変わる。

 なるほど、和菓子には抹茶なんだな。と、しみじみと実感した旅となったのでした。

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