階段
夏休み。
朝と昼は2階でエアコンをつけてはならない。と言う祖母のルールに則り、俺と弟は1階のエアコンの効いたダイニングで夏休みの宿題をしていた。
1時間もしないうちに俺達の集中力は切れ、ただの無駄話を始め、また徐々に宿題に集中しては切れ喋る。と言う事を繰り返していると親父が帰ってきた。
1階はエアコンが効いていて快適な温度。それでも帰って来たばかりの親父にとっては暑かったのだろう、ピピッと設定温度を下げてからエアコン前で涼み始めた。そして着替える為に蒸し風呂と化しているだろう2階への階段を、上がり始めた。
2階が暑い事は誰もが知っている現実、親父はかなり重い足取りで階段上がっていく。
最初の1段、
「はぁ~しんどい」
続く2段目、
「よいしょ」
1段1段掛け声を上げなければ昇れない程2階の気温は凄まじい。炎天下の日中、外の気温が35度程だったとしても、2階の室温は軽く40度を超えるのだ。なので親父が1段1段掛け声を上げても決して「五月蝿いな」とは思えない。
こうして「よいしょー」を5回聞き、続く掛け声。ドンと6段目に足をかける音のすぐ後から聞こえてきた掛け声は、
「あついー」
6段目から2階に着くまで「あついー」と掛け声を上げた親父のお陰で、俺達兄弟は涼しい1階と恐ろしく熱い2階の境目を知る事が出来たのだった。




