釣りの授業
小学校のプールは冬の間も水か抜かれる事はなく、魚が放流されて釣堀になっていた。
その為プールの授業が始まる前に大規模なプール掃除が行われる。その一環として5.6時間目に開かれる釣り大会。
中にいる魚を全て釣ってしまおうと言う考えが見える。
釣り道具は学校から貸し出してくれるのだが、餌は自分で用意しなければならず、小麦粉で練り餌を作って学校に行った。
釣りの授業が始まってしばらく、ピクピクと竿が動いた。ソッと上げて見ると小さな黒っぽい魚がかかっている。
俺は、そっと竿を下ろして何もかかってないように装い続けた。
また少ししてピクピク動く竿、ゆっくり、そっと上げて見ると多分さっきの奴がかかったままになっていた。
3人ほど隣の生徒は、餌だけ取られて逃げられたと悔しそうな声をあげている。
早く逃げてくれれば良いのにと思いながらまた少し揺れる竿。今度は上げずにそのまま放っておく事にしたのだが、ズット動いている。
「木場君かかってるんちゃうの?」
隣にいた女子が見兼ねたらしく声をかけてきて、仕方なく上げた竿。
さっきの魚がいた。
どうするか本気で悩む。
釣り針から魚を取る方法が分からないからだ。
俺はまたソッと竿を下ろし、隣の女子に言った。
「アレは餌です」




