ノートのとり方
俺は担任に贔屓にされていなかった。
毛嫌いされていたと言っても過言ではない。
贔屓にされている側の生徒が切欠で始まった喧嘩があったとして、担任も喧嘩にまで発展する過程を傍観していたとして。それでも悪者は贔屓にされない側の生徒なのだ。
小学校の授業は、音楽以外は全て担任が授業をしていたので、ほぼ1日中不当な扱いを受ける事になっていた俺は突然、こんな人間がしている授業に、ノートを使う事が勿体無い。と思い付いてしまった。
なので、怒られないギリギリの所まで手を抜く事に全てを費やすようになった。
黒板に書かれている図式は省略して文字だけを書き写すようになり、更に見やすいように1行開けて書いたりしていた事を止め、更に更に如何に小さく文字を書くか、に全神経を注いだ。
1マスを5×3位にして、小さく、小さく文字を書く。算数ドリルの答えは勿論、漢字ドリルの書き取りもその文字の大きさ。
目の悪い俺にとって、その文字の大きさを維持して書く事はかなり疲れる事でもあるし、もっとちゃんと書け。と怒られてしまう。それでも文字を小さく書いて提出した。
何故ならそこには、怒られないギリギリの所まで、と言う当初の目的を覆してしまえる理由があったのだ。
小さく、小さく書いた文字の中に、密かにバカと書き込んで提出し、それがバレなかったら俺の勝ち。と言う新しい遊びが始まっていたから。




