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SHORTで、俺。  作者: SIN
小学校 高学年

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178/485

無視して欲しい

 ある日、俺は教室で泣いていた。

 机に顔を伏して絶対に顔を見られないようにしていたが、俺の周りにいた3人の生徒は、確実に俺が泣いている事を知っていた。

 「木場君、ゴメンな」

 隣に座っている生徒Aがそう言いながら俺の背中をさすり、正面にいた生徒Bも、斜め前にいる生徒Cも、

 「ゴメン」

 と言うのだ。

 俺は謝罪なんて求めていなかったし、出来る事ならそのまま放って置いて欲しかったのに。何故謝って来るのか理解が出来ない。

 好きに4人組つくってーと言う拷問ではなく、席順に決められた4人で何か調べて発表しましょう、とか言う授業の最中での事だった。

 何を調べるのかと話し合いを始めてスグ、ヒントを探す為社会の教科書を眺めていた俺に、隣にいた生徒Aが顔を近付けてきて何気なく声を発したのだ。

 「ちゃんと見える?」

 え?と生徒Aを見ると、

 「眼鏡してるんアレから見てへんけど、買ってへんの?」

 と、今度は正面の生徒B。

 「度の入ったレンズやと結構するのにな」

 と、隣の生徒A。

 すると斜め向かいの生徒Cが、自分のかけている眼鏡を外して見せ、

 「コレ、3万位やったで」

 と、ニカリと笑った。

 俺の記憶違いじゃなかったんだ!

 「席替えあったら、前の方にしてもらいや?」

 「ウチらが言うてもアカンのんちゃう?」

 「俺ら全員で言おうや」

 俺の席1つで、何を真剣に話し合いをしてるんだろう?それ以前に、俺の目が悪い事を何故皆知っているのだろう。

 今まで通り無視で良いから。

 黒板が見えなくても授業をする担任の声は聞こえているし、教科書も見えているから授業内容は追えているから。

 だから、無視して欲しい。

 「怒ってる?」

 不意にかけられた言葉に混乱しつつ首を振ると、

 「良かった」

 と笑顔を向けられて。

 たったこれだけの事で、胸の奥の方からギューっと何かが込み上げて来て、その苦しさで目から液体が滲み出してきたのだ。

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