ベルマーク
学校ではベルマークを集めていた。
1年から5年までは任意で回収ボックスの中に入れるシステムだったのだが、6年になってから急に変わった。
1ヶ月に1回ベルマークを持って来る日、と言うのが出来たのだ。
そんな記念すべき1回目の朝、結構な量を持って来た俺は誰もいない教室で1番のりにボックスの中に入れた。
次々と登校して来る生徒達は、手にベルマークを持っていたがボックスに入れずにそのまま朝のマラソンに行き、結局入れたのは俺と、もう1人の男子生徒のみ。
そして始まった朝のホームルーム。
担任は回収ボックスを手に1人1人出席を取りながら持って来るようにと指示を出した。
「大谷君(仮名)」
1番に名前を呼ばれたのは出席番号1番の男子で、朝にベルマークをボックスに入れていた男子だ。
「登校してスグ入れたから、今ボックスに入ってるのん全部俺のです」
そんな説明をしていたが、全部と言うのは嘘だ。
俺は大谷(仮名)よりも先に結構な量を入れている。しかし、それを知っているのは朝のマラソンをサボっていた俺だけだ。
「次、木場」
俺の所に来た担任の顔は、もう既に鬼の形相である。机の上にベルマークを出していなかったからだろう。
どうせ説明したって誰も信じないし、信じさせた所で気分は悪い。
俺はベルマークを持って来た。例え誰もそれを知らなくとも、持って来た事実は変わらない。約束は破っていないのだから誰がなんと思おうとも関係ない。
だがしかし、ベルマークを忘れたとして怒られるのは納得出来ない。
俺は机から国語、算数、社会、理科、自由帳まで出すと、裏表紙にあるバルマークを千切ってボックスに入れた。




