引越し
大掛かりな引越し作業が始まった。
母と姉が出て行く為の荷物出しと、姉が使っていた部屋を俺の部屋にする為の荷物移動、そして、別居中だった祖母の帰還引越しの荷物入れ、そしてその祖母の部屋にあった電化製品を母達の新居に移動させる。それが同時に行われているのだ。
3DKの間取り、1階の部屋には俺、2階の1室には親父と弟、2階の奥の部屋が祖母の部屋となった。
「忘れモンないか?」
最終チェックをしている母は姉にそう声をかけ、姉は既に半分俺の荷物が置かれている部屋の中を見渡し、明らかに自分の物ではないと分かっていただろう箱を手に取った。
それはピアスを入れている俺の箱だ。
「もらってくわ」
意味分からん!
「何個かだけにして」
そんな高い物が入っている訳でも、そんなに種類がある訳でもなかったのだが、根こそぎ取られる事は納得出来なかったのだ。
すると姉は箱を開け、1番好きなんどれ?と聞いてきた。
それ以外のを全て持って行くつもりだろう、そう思ったので素直に1番気に入ったものを選んだ。しかし、姉はその俺が選んだピアスと、ピアスを入れていた箱を持って行ってしまったのだった。
姉が欲しかったのはピアスではなく、箱の方だったのだろう。




