長靴
雨の日、地面に出来るものといえば水溜りである。
水溜りに勢い良くバシャンと入って、溜まっている水を全て弾き飛ばす。という迷惑極まりない事をして遊んでいた俺を見兼ねたのかどうなのか、母が長靴を買ってくれた。
そして雨の日、幼稚園に行くまでの道中にある水溜りと言う水溜りに入りながら登園し、教室に入ってグランドを眺めていた俺の目に、とんでもない物が映った。
グランドの横には滑り台、ブランコ、タコのようなオブジェともう1つ、藤の木があった。
その下はコンクリートで囲われていたので雨水が溜まり、ちょっとした池のようになっていたのだ。
入らない訳にはいかない。
長靴を履き、颯爽と藤の木まで歩いて行くと、何人かの園児がその池の中に入っていた。皆微妙に動きが可笑しい。
もっとハシャグべき所ではないのか?
そう疑問に思ったものの、ただの水溜りとはレベルの違う水溜りを前に止まれず、片足入れた。
ズザザザザ。
「へぇ!?」
つけた足が冷たい。そして重い。
水溜りの水位が長靴を上回っていた事による悲劇だった。




