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SHORTで、俺。  作者: SIN
小学校 高学年

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大皿に大盛りで3~4人前

 日曜日は親父と母が2人で買い物に行く事が普通だったし、日曜日の昼食だけは夫婦揃って食事をしていたのに、祖母が出て行ってから日曜日の昼食は別々で、買い物も親父が1人で行く事が多くなった。

 だけど、晩酌は今まで通りで、2人はつまみを食べながら仕事の愚痴を言い合っていた。ただ、いくら険悪なムードになろうとも親父は「離婚するか!?」とは言わなくなり、険悪なムードになった時には声を荒げていた母が黙り込むようになった。

 ある日、黙り込んだ母がパッと立ち上がり、部屋を出て階段を駆け下りて行った。

 弟は親父達の言い合いが余程耳障りだったのか、イヤフォンをしてテレビの真ん前に座って画面だけを見ている。そして親父は何でもなさそうにビールをコップに注ぐ。

 姉は1階にあった祖母の部屋を自室として使っていたから、姉の部屋に行くと思ったのだろう。だけど聞こえて来る足音は玄関に方へ向かっていく。そして、

 ガチャ。

 鍵の開く音と、

 バーン!

 勢いよく閉まる音。

 マズイ。

 立ち上がって親父を見ると、中腰だった親父が俺の顔を見ながら頷いた。それに頷き返してから急いで外に出てみると母の自転車がなく、母の姿も何処にもない。だけど、連れて帰るよう親父に託された。

 まずは大通りに出て、それから?

 自転車に跨って大通りに出て左右確認。すると母は1つ向こうにある信号機の前で信号待ちをしていた。家から離れる事数メートルで発見出来たものの、声はかけなかった。

 一定の距離を保って、付いていくだけ。

 初めは物凄いスピードで自転車を走らせていたから、母と自分の間にある信号は全て無視するしかない。

 絶対に見失っては駄目なのだ。

 そうしていると、不意にゆっくりと自転車をこぎ始めた母は、時々後ろを振り返って来るようになり、1軒の飲食店の前で自転車を止めた。

 手招きされ、母の自転車の横に自転車を置くと、手を握られた。

 「お前おらんかったら、友達の家行こう思ってたのに」

 溜息交じりに言いながら、にぎにぎと手を握ってくる。

 友達の家に行くつもりだったんなら、余計な事をしてしまったのだろうか?だけど親父に託された。友達の家に行ったと報告だけすれば問題ない?

 手を離してくれない母は飲食店に向かってズンズンと進み、隅の方のテーブルに座って注文をした。

 間もなくやって来た料理は、お皿に大盛りの中華ポテト。

 「お前食えそうなんそれだけやもん」

 お店は中華料理店、魚介類も辛い物も苦手な俺にとっては少々難易度の高いメニューが並んでいた事だろう。それに加えて甘い物まで苦手なのだから、デザート系でも駄目。しかし、さつまいもは好きな俺の事を考慮した結果中華ポテトになったのだろう。けど、それにしたって、何故お皿に山盛り!?

 店を出て自転車に跨ると、母は無言でゆっくりと自転車を走らせた。

 家に向けて。

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