かける0
算数の授業になると、毎回九九を1の段から9の段までを全員で唱えると言う儀式があった。
そんな呪文を唱えていたと言うのに俺は7の段8の段がかなり怪しく、7×8=56と即答出来るのに、8×7と聞かれたら42と答えてしまえる程の頭脳を持っていた。
クラスメート達が漫画を読みながらでも九九が言えるようになった頃、担任は終に禁断の数字を俺達に教えた。
それは、0。
どんな数字であろうとも最後に×0と言われればたちまち答えは0になってしまう魅惑の数字だ
その授業中も担任は、
「7×4×8×9×2×7……」
と言い続け、そして最後に、
「×0は?」
と言っては生徒に、
「0!」
と叫ばせて遊んでいた。
さて、そんな授業が終わっての休憩時間。生徒はさっきの授業を真似して、
「6×8×3×3……×0は?」
なんて遊び始めた。そして周りにいる生徒は再び、0!と叫ぶのだが、それだけでは面白くなくなったのか、それともただただ言い間違えたのか、1人の生徒がこう言った。
「4+6×8×8……×0は?」
周りの生徒は再び元気良く、0!と叫んだのだが、どうしても違和感がある。しかし俺は算数が苦手な人間、この違和感自体が間違っている可能性もある。
しかし、でも……。
「4ですよ」
言ってやった!




