カミ
一時期、俺は弟の同級生から「カミ」と呼ばれていた。
何かを教えた訳でも、偉業を成し遂げる事もなく、極々普通にそう呼ばれた。
変なオッサンが学校の周りに出没するので弟と登下校するようにしていた俺は、弟の同級生からブラコン扱いを受けていたらしい。
そんな訳で随分と弟の同級生達から親しみやすく思われていたのだろう、紙飛行機折ってだの、鶴折ってだのとよく頼まれた。
初めのうちは「折って~」と可愛らしく来るのだが、徐々に「折ってぇや」と生意気になり、最後には威圧的な「早ぅ折れや」に変わっていく口調。
バシバシと容赦なく頭を叩いてくる弟の同級生達。
1人や2人ならまだ「コラコラ」で終わらせる事も出来るのだろうが、5人ともなるとただの暴力。しかしここで間違っても「痛いから止めて」と言っては駄目なのだ。そんな事を言えば面白がって余計に叩いて来るというお笑い番組のようなノリになるからだ。
やって欲しいと頼んだ事はやらない癖に、止めろと言う事は喜んでする。そんな子供らしい特徴を少しだけ試してみよう。
そう思いついた俺は折り紙を手に弟の同級生達の前に立った。
「折り紙が上手いからと言って俺を“カミ”とは呼ばないように」
こうして俺はしばらくの間「カミ」として君臨する事になったのだ。




